
カーナビの調子が悪くなり音声が出なくなりました。地図を持たなくなった昨今、不案内な土地では途端に制御不能に陥ってしまいます。画面に目をやるも、前方より注意が逸れてしまってはいけないので中途半端な確認になりうまくいきません。そこで、助手席に乗っている人にナビゲーションを依頼しました。しばらくすると、案内標識に出てくる情報を伝え始めましたが、標識に記された土地名やどちらに曲がるとどこへ向かうといった、目に飛び込んでくる情報すべてをこと細かに伝えてくれました。こうなると運転者は、どうしてよいのかわからなくなり、予定していたインターで降りられなくなったり、ひとつ手前の交差点で曲がってしまったりして、効率よく目的地にたどり着くことができなくなってしまいました。
これは運転者の欲している情報と入ってくる情報が「かみ合わない」ことによるもので、リスクを回避する上で、まず、検討しなければならない項目です。この場合、運転者には「○○m先を左(右)」「○km先のインターを降りる(入る)」と端的に行動を促す情報のみ提供することが求められるでしょう。
学校におけるリスク・マネジメントも同様で、対象となる「子ども」に多くの情報を与えても、彼らによる危険回避の行動化を期待することはたやすくないということです。「何のためにやっているのか」を常に振り返らなければ、対策ありきの対策になってしまい「かみ合わない」状態になるわけです。そこで、次の例を考えてみましょう。
感染症予防に「手洗い」は有効であり、その洗い方の質を高めたい。どのフレーズがよいでしょうか。
① バイ菌・ウイルスからからだを守るために、「すみずみまでていねいに洗いましょう」
② バイ菌・ウイルスからからだを守るために、「手のひらをゴシゴシ洗いましょう」
③ バイ菌・ウイルスからからだを守るために、「指先や指の間、手首まで洗いましょう」
どれも学校の手洗い場に貼ってありそうなフレーズですが、③が具体的で手指衛生の質を高めると思われます。①②はしっかり洗わせたい意図はわかりますが、洗う部位が曖昧で洗い残しが生じてしまいます。
ここでは、「感染症予防になる手洗い」をねらいとしており、対象となる「子ども」は「しっかり洗う部位」を求めています。そこで、端的に行動を促す情報、つまり、「かみ合う」情報は③ということになりますね。学校保健の分野では、こんな側面も考えていきます。
学校保健学・保健科教育学
短期大学部 体育学科
