
ギリシャ神話の神の一人プロメテウスは天界の物であった「火」を盗んで人間に与えたため、怒った最高神、ゼウスはプロメテウスを山頂に磔にし、毎日大鷲に肝臓をついばまれる責め苦を与えた、とギリシャ神話にあります。これはもちろんフィクションですが、「肝臓」ではなく他の臓器ではすぐに死んでしまうので、責め苦が「毎日」続くことは無いところに生々しさを感じます。実際、肝臓は他の臓器と異なり強い「再生力」を持っていることが知られています。例えば肝臓は手術などで2/3を切除されても、残る1/3が成長して2週間~1か月程度でほぼ元の重量と機能を回復します。これは、肝臓が傷害を受けるとそれに反応して肝細胞増殖因子(hepatpcyte growth factor, HGF)の血中濃度が高まり、それに反応して残った肝細胞が急速に分裂増殖し始めるためです。HGFを発見し、古代ギリシャ時代から認識されていたであろうこの肝臓の再生力の仕組みを解明したのは日本人研究者(中村敏一、大阪大学名誉教授)ですが、HGFが肝傷害時の何に反応して増えだすのか?逆に肝臓が元の重量に回復したらなぜ肝細胞は増殖をやめるのか?ということはまだ分かっていません。その仕組みがあって肝臓は「適正な」大きさと働きを維持しているといえます。この問題の解決は、細胞が異常増殖する疾患、すなわちガンの仕組みや、再生しないといわれている組織の障害、例えば神経傷害による麻痺や後遺症の治療方法などにも発展することが期待されています。
分子生物学
健康科学部 栄養科学科
