
赤ちゃんは、生後2~3ヶ月頃から「アーアー」「ウークン」などと声を発するようになります。この「アーアー」や「ウークン」は、「喃語(なんご)」と呼ばれ、言葉としての意味を持ちません。赤ちゃんは、意味のないおしゃべりを楽しみながら、舌や唇などの調音器官を発達させ、いろいろな声を出せるようになります。赤ちゃんが1歳前後で意味のある言葉を発するようになるのは、喃語によって調音器官が鍛えられたおかげでもあります。
さて、赤ちゃんが意味のない喃語から意味のある言葉を話し出す過程で、親バカが役に立っているのをご存知でしょうか?
例えば、赤ちゃんが「ウークンンマンマンバババー」と喃語を発したとします。すると、その時、近くにいたお母さんには、「ウークン『ンマンマ』ンバババー」と聞こえます。そして、お母さんは、「『ンマンマ』って言った? きっと『ママ』って呼んだのね!」と大喜びして、「は~い。ママですよ~」と答えるわけです。
赤ちゃんが「ママ」に近い声を出すたびに、親バカ全開のお母さんは、嬉しそうに反応するということを繰り返します。「ンマンマ」「は~い」「ンマンマ」「は~い」という具合に。やがて、赤ちゃんのほうも、「ンマンマ」と言えば反応してくれる人がいることを理解するようになります。お母さんの返事は、赤ちゃんの意味のない音声(喃語)の連続に語としてのまとまりを作り、そのまとまりに「ママ」という意味を持たせてしまったのです。
周りの大人は、かわいい赤ちゃんが何か話していると思い、勝手に意味ある言葉を聞き出そうとします。そのような極めて主観的で願望的な思考と態度が、赤ちゃんの言葉を育てるうえで、とても重要な役割を担っているというわけです。赤ちゃんの周りの大人たちには、ぜひ、親バカぶりを競い合ってほしいと思います。
国語科教育・国語学
健康科学部 こども健康・教育学科
