スポーツ栄養にまつわる"ウソ"と"ホント"
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俗説3
低糖質ダイエットは痩せる!?
判定:ウソ
短期間で減量できるが、長期的な効果は低糖質ダイエットと変わらない。
選手を納得させる科学的解説:
低糖質ダイエットは、白米やパンなどの糖質を控えることで、比較的短期間で減量ができるとされている。
「アトキンスダイエット」「低インシュリンダイエット」「低GIダイエット」などの名称で周期的に取り上げられるこれらのダイエット法では、インシュリンの分泌を抑えることが体重減少のメカニズムの本質である。
インシュリンは食後に上昇する血糖(グルコース)を筋肉や脂肪組織に取り込み、血糖値を下げる。
インシュリンは、筋肉に取り込まれたグルコースがグリコーゲンに合成されたり、脂肪組織に取り込まれたグルコースが脂肪に合成されたりすることを促進する。
また、インシュリンは、肝臓でグリコーゲンや脂肪の合成を促進する。
さらに、インシュリンは摂取した脂肪や肝臓で合成された脂肪を脂肪組織に取り込ませる作用を持つ。
このように、インシュリンは、脂肪の合成と蓄積を高める働きをする。
したがって、インシュリンの分泌を抑えると、体脂肪の蓄積を抑制することにつながる。
しかし、運動時にもっとも重要なエネルギー源は糖質であること加え、低糖質ダイエットを行うと筋力は肝臓のグリコーゲンが十分に充填されないため、疲労からの回復が遅くなる可能性がある。
さらに、低糖質ダイエットと低脂質ダイエットの長期的な効果には大きな差がないという報告もある。短期間での体重減少は見られるかもしれないが、長期的な視点ではその効果は限定的である。
「低糖質ダイエットは短期間で体重を減らせるかもしれないが、長期的な効果は低脂質ダイエットと変わらない。運動時のエネルギー源として糖質は重要だよ」
グリコーゲン(glycogen):筋肉と肝臓に蓄えられる糖の一種で、筋肉のグリコーゲンは筋肉の収縮のためのエネルギー源。肝臓のグリコーゲンは脳のエネルギー源となる。ちなみに食品会社の江崎グリコ株式会社の社名はここからきている。
俗説2
痩せるためには白米を食べてはいけない
判定:ウソ
白米を抜いて痩せても、運動選手としての力を発揮できなくなる可能性が高い。
選手を納得させる科学的解説:
多くの人が、痩せるためには白米などの糖質を避けるべきだと考えている。
これは、糖質を減らすことで体重が減少しやすいと信じているためである。
特に選手は体重管理を重視するため、この考えに陥りやすい。
しかし、この「白米を食べない」方法には大きな問題がある。
十分な酸素が供給されない高い強度での運動では、糖質が主なエネルギー源となる。
運動強度が高まると、心臓が全身に送り出す血液の量が限界に達し、筋肉が酸素不足になる。
このような状況では、糖質=グルコースが最も効率的に利用される。
つまり白米を含む糖質を抜くと、トレーニングや競技中に十分なエネルギーを供給できなくなり、競技力が低下するのだ。
無駄な脂肪を減らすことは重要だが、選手として発展するためには適切な糖質摂取が不可欠にである。
特に白米は、日本人の主食としてバランスの取れたエネルギー源であり、適切な摂取が競技力の向上につながる。
「白米を食べなければ短期間で痩せることはできるかもしれないが、トレーニングや競技中に必要なエネルギーが不足し、力を発揮できなくなる。 糖質は運動中の重要なエネルギー源だから、適切な量を摂取することが大切だよ」
俗説1
痩せれば速く走ることができる!?
判定:ウソ
痩せて速くなるのは一時的で、痩せるほど筋力は小さくなるためタイムは伸びなくなる。
選手を納得させる科学的解説:
短距離でも長距離種目でも力が同じであれば、体重が軽い方が速く走ることができる。
筋肉を大きくするのに比べ原料するのは簡単なので、手っ取り速く走るためには、食事を抜いて体重を落とせば良いという考えになりがちである。
とりわけ、長距離選手にその傾向が多いように思われる。
しかし、この方法には発展がない。
一次的には速く走れるようになるかもしれないが、より速く走るためには、さらに痩せる必要があるからである。
痩せれば痩せるほど筋肉は少なくなり、筋力も小さくなってしまう。
速く走るために無駄な脂肪を減らすことは大切だが、選手として発展していくためには、まずトレーニングをして筋肉をつけることが本質的な課題となるはずである。
「痩せると一時的に速く走れるけれど、痩せるほど筋力が落ち、継続的に速く走るには逆効果。 トレーニングをして筋力をつけることの方が大切だよ」