至学館の豆知識

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2016年3月

ちがいはどうして生じるの?
-立ち幅跳びで250cm跳ぶ人と200cmしか跳べない人-

 体力測定で、立ち幅跳びを行いました。A君は200cm、B君は250cmでした。このちがいは何が原因でしょうか。たしかに、跳躍技術やその時の心理状態などが影響しますが、それらが同じだったとしたら、この二人は何がちがうのでしょうか?
 そもそも「立ち幅跳び」は体力要素の何を測っているのでしょうか?ずばり瞬発力です。瞬発力は専門的には「筋パワー」とよばれ、「筋肉が素早い動きの中でどれだけ強い力を発揮する能力があるか」を表すもので、「筋力×スピード」で求めます。一瞬で遠くへ跳んだり、高く跳んだり、遠くへ投げたりといった運動に関係する体力要素です。したがってB君の方がA君より筋パワーが高いということです。
 B君の筋パワーが高い理由の一つは、日ごろからウエイトトレーニングで脚筋力を鍛えていたということが考えられます。確かにトレーニングによって、筋肉が肥大し、筋力が高まります。それでは A君がB君と同じトレーニングをしていたら同じ距離を跳べるようになるのでしょうか?そうとは言えないのです。 B君(筋パワーが高い)とA君(筋パワーが低い)は筋肉の性質が異なっている可能性があります。B君の筋肉は、「収縮速度(スピード)が速く収縮力(筋力)が大きい速筋線維」の割合が「収縮力は小さく収縮速度は遅いけれど持久的な遅筋線維」より多いと推察できます。
 体力測定をすると、体力の高い人と低い人にわかれます。なぜそのような差ができるのか、どうしたら体力を効率よく高められるのかという、素朴な疑問の解決を前述のように学んでいくのが「トレーニング科学Ⅰ」です。自分自身の体力を高めるためばかりでなく、指導者として対象に応じた体力の高め方を学習する上でも重要な知識ですね。

運動学(野外運動)
短期大学部 体育学科


2016年2月

子どもたちの成長にとって大切な「サンマ」ってなぁに?

 三つの「マ」を持つことが、子どもたちの成長にとって大切だと言われていることをご存知ですか。では、この三つのマ、すなわち「サンマ」、が何を指すのか少し考えてみましょう。

  1. MOTHER:マザー  (どんなわがままでも聞いてくれるお母さん)
  2. MONEY :マネー  (好きなおもちゃをたくさん買うためのお金)
  3. MAGIC :マジック (大嫌いなピーマンを大好きなチョコレートに変える魔法)
 正解!では・・・ありません。確かに、どれも魅力的に感じるかもしれませんね。しかし、子どもの成長に大切な「サンマ」とは次の三つをさしています。
  1. 時間 (子どもたちが自由に遊ぶことができる時間)
  2. 空間 (子どもたちが思いきり遊ぶことができる空間)
  3. 仲間 (子どもたちが一緒に遊ぶことができる仲間)
 子どもたちは、仲間とともに自分たちだけの空間を創り、そこで子どもらしい時間を積み上げていくことを通して、創造力や協調性などを獲得し自立していくのです。近年、都市化や少子化を例とする顕著な社会変化により「三間」が失われつつあると言われています。子どもがたくさんいた時代、隣近所に公園や空き地があった時代、塾や習い事に通わず放課後にたっぷりと自由な時間があった時代、そんな時代に戻ることは難しいでしょう。そこで求められるのは、現代の子どもたちが置かれた状況に寄り添った「三間」の獲得方法を創出すること、すなわち、子どもが少なく、安全に遊べる場所がなく、自由な時間を持たない子どもたちが、いかにして「三間」を獲得することができるか、知恵を絞ることです。何か素敵なアイデアが浮かんだら、ぜひ至学館大学まで連絡くださいね。

教育学
健康科学部 こども健康・教育学科


2016年1月

食事の彩が大切っていうけど、それって何にいいの?

 古代から食べ物は、体に対して良い効果をもたらすといわれ、五味、五色、五法という言葉があります。
 五味とは、「塩、甘、酸、辛、苦」の味つけで、五色は、食材の色をさし、「青(緑)、赤、白、黒、黄」です。五法は、「生、煮る、焼く、揚げる、蒸す」という調理法です。
 これは、これらを組み合わせた食事を摂ることにより、健康な体を保てるという考え方です。
 最近注目されている食物成分のひとつにフィトケミカルというものがありますが、食物の色素、香り、アクなどに含まれる化学物質で、「機能性成分」ともいわれているものです。
 フィトケミカルは、単独で摂るより組み合わせて摂ったほうが効果的なことが分かっています。1食の中でいろいろな色の食材を摂ると多くのフィトケミカルが摂れます。
 彩は、食材を「きれいに盛り付ける」という意味だけでなく、このような科学的根拠があっての彩なのです。

調理学
健康科学部 栄養科学科


2015年12月

クリスマスや年明けなどに携帯やスマホのメールが送れなくなることがあるのはなぜ?

 クリスマスのメリクリ・メッセージや正月のアケオメ・メールなど、メールを送ったのに届かない、送られてきているはずなのに届かない、というようなことを経験したことはありませんか?
 携帯電話やスマートフォンで電子メールをやりとりする場合、一見端末から端末へ一対一でやり取りしているように思えますが、実際には発信者の元から何度か「サーバ」というシステムへメールの内容を書き込みながらリレーしていき、その後最終的に受け手の端末へ届く仕組みになっています。
 サーバの基本的な構造はパソコンと同じです。したがって、同時に膨大な数の書き込みが行われると、処理に時間がかかったり、場合によってはシステムが壊れてしまったりすることもあります。そうすると、システムが復旧するまでメールの正常なやり取りが行えません。このような理由から、同時に多数のメッセージがやり取りされるクリスマスや年明けに一時的にメールが届かなくなることがあるのです。このようなことは、大きな震災などの災害が起こった場合にも起こり得ます。
 最近は、携帯電話の会社(キャリア)もこのようなトラブルがないよう、あらかじめサーバの能力を高めたりネットワークの規模を拡大したりするなどの措置を施していますが、大災害の際には不要不急のメールのやり取りを控えるなどした方が良いでしょう。

情報教育、メディア工学
健康科学部 健康スポーツ科学科


2015年11月

「ばぁば」は「じぃじ」に勝つ!?

 口を一度も閉じずに「アイウエオ」と言ってみてください。言えますね。では、同じように口を一度も閉じずに「マミムメモ」「バビブベボ」「パピプペポ」と言ってみてください。いかがですか? 難しいでしょう? それもそのはず、m、b、pは、一度閉じた上下のくちびるを開くときに出す音だからです。
 これら「マ行」「バ行」「パ行」音の多くは、比較的簡単に出せるようで、赤ちゃんもマスターするのが早いと言われています。だから「パパ」「ママ」や「マンマ」「ブーブ(お湯、お茶)」は、早くから言えるようになるのですね。というより、早くマスターできる音だからこそ、「パパ」「ママ」「マンマ」「ブーブ」などが、赤ちゃんにとって大事な意味を表す言葉になっていったのでしょう。
 マスターするのが難しい音もあります。たとえば「サ行」や「ザ行」の音。「サ行」「ザ行」音の多くは、上下の歯の間を息が擦(こす)り出される時に出る音です。歯がある程度生えそろってからのほうが、断然発音しやすいのです。
 ―ということは、赤ちゃんにとって、どちらかと言えば「ばぁば」は簡単で、「じぃじ」は難しい言葉ということになりそうですね。
 「赤ちゃんが、私のことを呼んでくれた!」と最初に喜ぶのは「パパ」「ママ」に譲るとして、「ばぁば」も、まもなくその喜びを味わうことができるでしょう。でも、「じぃじ」は?
 赤ちゃんが「じぃじ」と呼んでくれないのは、「じぃじ」のことが嫌いだからではありません。「じぃじ」という音が難しいからなのです。がっかりしている「じぃじ」を見かけたら、ぜひ理由を教えてあげてくださいね。

国語科教育・国語学
健康科学部 こども健康・教育学科


2015年10月

運動するときのコツとは何者か

 先日、私が担当している器械運動の授業でこんなことがありました。鉄棒の授業のときに「どうしたら逆上がりができるようになる?」と受講生に聞いたところ、“腹筋を鍛える!”とか“腕の力が必要”と言います。それではまずやってみようということで逆上がりをやったのですが、その中に逆上がりが全くできない学生がいました。受講生の中には「おまえは筋力が足りないんだよ」とか「気合が足りないんだ」などと言っています。そんな中その学生は私のアドバイスの通り20分くらい練習したのですが、ある時突然ヒョイッと上がってしまったのです。その時は体育館中、拍手喝采でした。
 さて、ここで不思議な問題が浮かび上がります。その学生は20分で腹筋が強くなったのでしょうか?また、腕の筋量が数分で増加したのでしょうか。おそらく違いますね。その学生はおなかや腕の「動かし方」を学んだだけなのです。つまり〈コツ〉をつかんだのです。それがスポーツ運動学で学習する人間の運動感覚の話なのです。みなさんもスポーツをするとき〈コツ〉に出会うことがありますよね。シュートのコツ、ドリブルのコツ、スタートのコツ…。
 でも、運動のコツなんて言うものは一般的には、「そんなもの客観的ではない」とか「その人だけのものでしょ。」といっていつも無視されてしまうものです。しかし、選手や運動する人にとってそれはとても大事なものですね。運動の上達が速い人というのは、コツをつかむのが速い人と言えるかもしれません。また、優秀なコーチや教師はコツのつかみ方をちゃんと教えてくれると人だと思います。おそらく、「あなたの動きはこうなっている」と言うだけでなく「こういう感覚でやるとうまくいくよ」と。
 そこでは “kinästhese” -キネステーゼ- という極めて重要な能力がかかわっており、これを解明し理解することがスポーツの世界では重要になるのです。
 本学では、このような不思議な世界について学習し理解を深めることができます。

スポーツ運動学
短期大学部 体育学科


2015年9月

プロテインを飲めば飲むほど筋肉は増えるの?

 プロテインとは、日本語で「たんぱく質」を意味しますが、たんぱく質を主成分とするサプリメントとして知られています。たんぱく質は筋肉、内臓、血液など、私たちのからだをつくる材料になります。そのたんぱく質を効率よく摂ることができるプロテイン。たくさん摂取するほど筋肉づくりに有効だと思っている人も多いのですが、これは間違いです。たんぱく質を必要量以上に摂取しても、トレーニングの効果が増大するわけではなく、過剰に摂取したたんぱく質は、体脂肪として蓄積されてしまうのです。
 スポーツ選手のたんぱく質の必要量は、体重1kg当たり1.2~1.7g程度。これは、たんぱく質を多く含む肉、魚、卵、大豆類などを食事の中に上手く取り入れることで、十分に摂取できる量なのです。
 「じゃあ、プロテインは必要ないの?」
 実はプロテインの賢い活用法は、その摂取タイミングがポイントになります。筋肉を効率よく増やすには、運動後、なるべく早くたんぱく質と糖質を摂取することが大切です。しかし、運動後すぐに、たんぱく質と糖質を多く含む食事を用意して食べることはなかなか難しいものです。そんな時、水に溶かしてすぐに飲めるプロテインはとても便利ですよね。プロテインには糖質が含まれているものが多いため、運動直後の補食として利用することができるのです。
 筋肉増量を考えたたんぱく質の摂取には、量とタイミングを考えることがポイントです。

スポーツ栄養学
健康科学部 栄養科学科


2015年8月

速いボールを投げるためのコツ

 テレビなどで野球の投手が投げるボールの時速が良く報道されます。では、速いボールを投げるにはどのようにすればよいのでしょうか。
 速いボールかどうかは手から離れた瞬間に決まります。離れるまでボールは手の指についています。つまり手の指がどれだけ速いスピードで投げる方向に動いているかで決まるわけです。
 しかし、手の指だけでボールを速く投げることはできません。手につながる腕、胴体、脚が連動して徐々にボールを加速させ、手から離れる直前にスナップを利かせてさらに加速させます。このスナップまでにどれだけ腕を速く振るか、また、腕を振るまでに胴体をどれだけ加速するか、そして、胴体を加速するために脚がどれだけ地面に力を伝えられるかと言うように、全身が連動してボールを加速して行きます。地面を蹴り始めてからスナップまでの一連の動作は「ムチ動作」と呼ばれ、ムチがしなって進みながら先端が加速する様子と似ています。ムチのようにしなやかに根元から動き、徐々に先端へとスピードを上げてゆくイメージでからだを使うことが速いボールを投げるコツです。

スポーツバイオメカニクス
健康科学部 健康スポーツ科学科