至学館の豆知識

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2023年12月

先人の知恵

 明治時代、日本が国を挙げて近代化を進める中で、先人達は欧米文化の受入れに際し、外国語を翻訳し、新しい日本語を作っていきました。コンセプトを概念、ソサエティを社会などとしました。今ならあっさりと外来語の発音のままカタカナで書き表すところでしょうが、昔の人は律儀りちぎでした。漢字を組合せ、何とか意味を伝えようとしたところに知恵を感じます。ロマンチシズムを浪漫主義と訳し、五大陸を表現する五つの輪から、オリンピックを五輪としたのは意味だけではなく発音も考慮している点で優れていると思います。
 ベースボールは野球と訳し、あわせて関連する言葉も事細かく作りました。そのお陰か、ビジネスとして日本で最も成功したスポーツの一つになっています。当時作られた言葉が、現在でもスポーツ新聞などで活躍しているのはご承知の通りです。投手、捕手、野手、打者、走者、安打、本塁打、犠打、邪飛球、野手選択、死球、四球、主審、塁審・・・。西洋由来のスポーツで、これほど多く漢字で表せるものも珍しいのではないでしょうか。面白いのは、これら国産の野球用語の多くが、漢字の本家中国でもそのまま使われていることです。
 比較的最近では、コンピュータが電子計算機と訳されましたが、中国では電脳とされました。こちらの方がより雰囲気を伝えているように思いませんか。ところで、パソコンやその周辺機器の取扱説明書を見たことはありますか。アルファベットとカタカナ語の羅列で素人しろうとはとても悩みます。どこまでが一般名詞なのか、固有名詞(製品名)なのかすら分かりません。プロトコル?イーサネット?「いいんだ、所詮しょせん・・・」と開き直って「強制終了」です。

保健体育科教育法
健康科学部 健康スポーツ科学科
教授 新井 忠


2023年11月

スポーツの際、温める?それとも冷やす?

 スポーツを行う際に、温めたほうが良いでしょうか?それとも冷やした方が良いでしょうか?
 スポーツの前には、ウォーミングアップとして温めましょう。温めることにより、血流が良くなり関節や筋肉が柔らかくなります。その結果、パフォーマンスの向上とケガの予防に繋がります。そしてスポーツの後には、痛みのある部位と酷使した部位を氷水で15分から20分間冷やしましょう。炎症を軽くすることができ、翌日以降のコンディションを良い状態に保つことができます。
 一方、ケガをした直後は、温めてはいけません。温めると痛みと腫れが悪化してしまいます。必ず氷水で15分から20分冷やすことが必要で、1時間に1回程度、繰り返します。ケガをした部位に圧迫を加えて、心臓より高い位置に保つとさらに効果が増します。こうすることにより、内出血や腫脹が減って組織の損傷が防がれ、早期のスポーツ復帰に役立ちます。
 スポーツの際、練習前には温めて、練習後とケガの直後は冷やしましょう!

スポーツ医学
健康科学部 体育科学科
教授 近藤 精司


2023年10月

日本の教育、海を渡る

 現在、エジプトの小学校では、児童の道徳心・規律・協調性を育むことをねらい、日本の学校教育の「特別活動」(とくにその内容の1つである「学級活動」)が採り入れられ、現地化しながら広がりを見せています。2018年から「TOKKATSU」という科目が設置され、国内にある約18000校全てでの実施に向け、教師向けの指導書も作られています。
 なお、エジプトのTOKKATSUには学級会、学級指導、日直、掃除などが含まれ、「ミニTOKKATSU」という愛称が付けられています。さらに、エジプトでは日本式教育の普及のため、現地の児童が通うエジプト日本式学校(Egypt Japanese School、通称EJS)も政府主導で設立されており、2022年には48校に増えています。
 エジプトの子どもたちから好評なのは「日直」だそうです。一部の優秀な子どもだけがリーダーとして活躍するのではなく、誰もが輪番制でリーダー体験をすることができる日直により、学校生活への意欲が増し遅刻や欠席が著しく減少し、人前に立つことが苦手な児童も徐々に慣れたとのこと。男女平等が促進されるという期待の声もあります。また、話し合い活動や掃除なども効果を生んでいます。
 こうして海を渡ったことが、改めて日本の学校教育を見直し、よりよいものに変革する機会にもなると考えます。

学校教育学
健康科学部 こども健康・教育学科
准教授 平田 幸男


2023年9月

皆さん、お米食べていますか?

 米は日本人の主食です。まもなく(8月下旬から収穫される物もあります)、新米の季節、おいしいご飯があると食が進みますよね!新米は、水分含有量が多いので、入れる水を気持ち控えめにするとおいしく炊けます。また、鮮度が大事ですので、なるべく精米後すぐに食することが、おすすめです。ゆえに、お米は少量ずつ購入するのがよいですね。保管は、密封して冷蔵庫に入れておくと、鮮度が保てます。
 米は、炭水化物のイメージが強いですが、実はタンパク質もご飯100g(コンビニのおにぎり1個くらい)あたり、2.5gとることができます!
 ところで、皆さんは、推しの銘柄ありますか? 作付面積NO.1を誇るコシヒカリを始め、日本には約300種類もの米が生産されています。たくさんの銘柄があるのは、日本が南北に細長いため、地域によって天候が異なるためです。都道府県によって、いろんな銘柄の米が開発され、最近では、スーパーにも、たくさんの種類の米が並ぶようになりました。甘みの強い物、大粒系、もっちり系、さっぱり系など特徴によって選んだり、おむすび用、カレーライス用、お寿司用など用途によって、銘柄を変えるのも楽しいですね。今、私の一番の推しは、深い甘みが感じられる、秋田県産「サキホコレ」です。見つけたら、是非食べてみてください。

ライフステージ栄養学
健康科学部 栄養科学科
准教授 藤田 静子


2023年8月

男性の筋肉の方が女性より優れている!?

 男性の筋力は、女性より高いと思っていませんか?
 確かに絶対値(そのものの値)で比較すると男性の方が高いですが、相対値(体重当たりの値)で比較するとほとんど差がありません。例えば、男性Aさんの握力が40kgで体重が70kg、女性Bさんの握力が25kgで体重が45kgであった場合、絶対値で比較すると男性40kg>女性25kgとなりますが、相対値では男性40kg÷70kg=0.57kg/B.W.、女性25kg÷45kg=0.56 kg/B.W.となり、ほとんど差がありません。
 一般的に、男性の方が筋力は高いと思いがちですが、これは、単に男性の方が、体重が多いさらに詳しく言うと筋肉が多いからだけなのです。同じ体重、筋肉量であれば、基本的には筋肉が持っている能力自体に男女差はないのです。男性の筋肉も女性の筋肉も同じで、男性の筋肉の方が優れた筋肉というわけではないのです。

トレーニング科学
健康科学部 健康スポーツ科学科
教授 仲 立貴


2023年7月

いつの年代にどんな体力をつけたらいいの?

 日本のプロ野球界では前人未踏であった『二刀流』を大リーグでも成し遂げ、正に世界的な一流選手として活躍している大谷翔平選手は、世界のファンを魅了しています。その高いパフォーマンスは、大きな体格と優れた運動能力に裏付けされています。大谷選手は幼少期をどのように過ごし、恵まれた体格と運動能力を手に入れたのでしょうか。子どもは大人のミニチュアではありません。脳重量の発達、姿勢の制御能、動作パターンの獲得にみられる加齢的変化は、幼児期を通じて顕著にみられるため、大人と子どもの身体的特徴の違いを把握しないままのサポートは意味がありません。
 動作の反応時間や最大酸素摂取量、握力の年間増加量から、各々が代表する体力の発達パターンは、年齢によって異なるという知見(図1)から、幼児期から10歳くらいまでに、平衡性や敏捷性、巧緻性、などのコーディネーションの獲得に適時性があると言えます。幼い子どもは飽きっぽいことが特徴ですから、小学校中学年くらいまでは遊びの中で、楽しみながら様々な身のこなしの習得ができることが肝要です。高学年では動きの洗練から、次第に持久的運動に進めるとよいでしょう。また、中学校期では、身体の発育に身のこなしを適応させると共に、心肺機能の発達が著しい時期ですから、持久的能力を高めることが適しています。そして、高等学校期では、持久的運動と並行して、筋力を高めていくような発達的特徴に対応した運動が必要となってきます。大谷選手のような、将来においてスケールの大きな選手になるためには、このように身体の発育に伴った運動能力や体力の適時性を加味した上でトレーニングを導入することが大切なことなのです。


発育発達学
健康科学部 体育科学科
教授 浅野 幹也


2023年6月

バスケットボールのゴールについているバックボードは何のため?

 まずはバスケットボールの誕生について説明します。
 バスケットボールは、カナダ出身でアメリカの国際YMCAの体育教師であったジェームズ・ネイスミス氏が1891年(明治24年)に考えたスポーツです。
 ネイスミス氏は、降雪のため運動場が使えない冬に室内でできるスポーツを考えて欲しいと依頼されて考案したのです。当時のバスケットボールは、1チーム9人でした。ボールはサッカーボールを使っていました。
 ゴールは、今の学校の体育館にあるようなものではありませんでした。たまたま体育館にあった桃を収穫するかごを体育館のバルコニーにつけただけです。かごですから穴は開いていません。ゴールするたびに、はしごを使って登ってボールを取っていました。これでは、いちいち大変ということで、かごに穴を開け落ちてくるようにして、最終的に今のような形になっています。このときのかごの高さが3.05m(10フィート)で今も同じです。
 さて本題のバックボードですが、バックボードには黒い四角の枠があり、あの上の角をねらうと入りやすいと教えてもらった人もいると思います。つまり、バックボードを上手く使ってシュートするためとか、ボールが後ろに飛んでいかないためと考えている人もいると思いますが、違います。バックボードはネイスミスがバスケットボールを考案した当初ありませんでした。その後、バスケットボールが人気になり大勢の観客を入れて試合が行われるようになりました。すると、2階のバルコニーから応援していた観客が自分の応援するチームを勝たせるため、相手チームのシュートを手摺りから足や手を出して妨害するようになりました。そうです、シュートの邪魔をされないように取り付けられたのです。当初は、金網でしたが、その後白く塗った木の板に、今は後ろからでも見えるように透明のポリ・カーボネート製などになっています。
 スポーツの歴史を調べてみると、意外なことが分かっておもしろいです。機会があったらいろいろ調べてみてください。スポーツの歴史を調べてみると、意外なことが分かっておもしろいです。機会があったらいろいろ調べてみてください。

保健体育科教育学
健康科学部 こども健康・教育学科
教授 加藤 雅之


2023年5月

ご飯は本当に甘い?

 ご飯はよく噛むと甘くなるからキチンと噛んで食べましょう、という話を聞いてきませんでしたか?実際にお米は甘いのでしょうか。
 精白米の成分の約75%はデンプンです。デンプンは、ブドウ糖が数千~数万個の真珠のネックレスようにつながったものです。ヒトが甘みを感じるにはブドウ糖という真珠を味覚細胞が検知する必要がありますが、ネックレス状態だと検知されません。ご飯をよく噛むと甘く感じるのは、唾液に含まれるアミラーゼという酵素がデンプンを分解することで一部がブドウ糖となるからです。ちなみに、ブドウ糖は砂糖や果物に含まれる果糖ほど甘くないので、ほんのり甘いと感じるのは正しい感覚です。
 話は変わって、昨年のノーベル生理学・医学賞は「古代DNAの解析」を研究したドイツのスバンテ・ペーボ博士が受賞しました。ペーボ博士はDNAを比較することで旧人類と現生人類が交配していることを明らかにし、人類史研究に革新をもたらしました。同様の手法で、人類移動の軌跡、地域によるヒト遺伝子の違いもたくさんわかってきました。例えば、アミラーゼ遺伝子の数の違いを比較した研究があります。アミラーゼ遺伝子はヒトDNAの中に複数個ある変わった遺伝子の1つです。多い人だと10個ほど、少ない人だと2個程度の遺伝子を持っているそうです。アミラーゼ遺伝子が多ければデンプンからブドウ糖をたくさん作ることができるため、より甘く感じることができるというわけです。日本人は世界的に見てもアミラーゼ遺伝子の数が多いそうです。実際に日本人は9割以上がデンプンを噛むと甘く感じるが、外国人は2割程度のようです。
 管理栄養士は食事をうまく飲み込めない方に向けて、片栗粉(デンプン)などを使って「とろみ」を付けた献立もつくります。ヒトによって「とろみ」を分解してサラサラにする速さも変わってくるわけですから、様々な工夫が必要になってきますね。

生化学・分析化学
健康科学部 栄養科学科
教授 保住 建太郎


2023年4月

「ゲーム理論」・・・聞いたことありますか?

 皆さん「ゲーム理論」という言葉を聞いたことがありますか。ゲームだから碁や将棋、トランプ、スポーツ、スマホのゲームに関する理論かなと思われるかもしれません。このゲーム理論は経済学を中心に国際関係、政治、産業、貿易、また生物学や人類学など広い分野で使われている理論です。
 学校でもスポーツのチームでも一般の企業においても、組織やチームを発展させるためには、戦略をたてないといけません。自分の人生においても、どの大学を選ぶとか将来どのような分野の仕事に就くとか、皆さん考えますよね。そんな時に使えるのがゲーム理論です。要するにゲームには、プレーをするフィールドがあり、そこにはプレーヤーがいて、勝ち負け(利得)があって、勝敗を判定するかつゲームを進める上での規則・ルールがあります。そして、勝つためには戦略をたてます。この戦略の立て方でどのような勝敗(利得)が得られるかを考える行動(研究)がゲーム理論にあたります。
 例えば、将来プロのサッカー選手やプロ野球の選手を目指す中学生がいるとします。どの高校に進学するか考えた場合、プロチームのスカウトの目にとまるように選手権大会出場の常連校に進学する戦略が考えられます。もしくは、高校でスカウトの目に留まらない場合を考えてスポーツの強い進学校に進んで大学に進学し、大学選手権大会でスカウトの目にとまるような代替案を考えた戦略もあるでしょう。また、戦略を決定するうえで、良いコーチのいる高校、自分の実力を磨くために競争相手となる優秀な選手が多い高校を選ぶ、といった進路の選択もゲーム理論の一部と言えるでしょう。
 4年間という長い学びの場で、将来の幸福で豊かな自分の人生づくりにつなげていく場が、大学です。その大学選びが人生設計の戦略といえます。大学が発信する情報を収集して、どの大学を選ぶかが戦略で、その結果大学での学びからどのような利得(能力)が得られるかを考えるのがゲーム理論です。あなたもゲーム理論にトライしてみませんか。

参考文献:青島 矢一・加藤 俊彦 競争 戦略論 東洋 経済 出版社 2008.

スポーツ経営・社会学
健康科学部 健康スポーツ科学科
教授 竹下 俊一