2017年度
2018年3月
抽象的とは、はっきりしていること
どうも話が抽象的すぎてわからない。とはよく聞かれる文言です。
でも、抽象的とはどんなことでしょうか。「象 カタチ」を抽き出すこと。それを抽象と言います。
「象 カタチ」がはっきりすれば、わかりやすい。そうは思いませんか。
球でも三角錐でも目の前の様々な、具体的な物を多様な角度から見たり触れたりすることを通して、はっきりした「象 カタチ」をつかむことができるようになる。
愛や恋、平和や戦争、人生などというものも同じでしょうね。
健康科学部 こども健康・教育学科
2018年2月
五郎丸は、なぜパフォーマンス・ルーティンを行うのか?
今年度、流行語となったラグビー、五郎丸選手のキック前の「ルーティン」。正確には、「パフォーマンス・ルーティン」と言います。五郎丸選手以外にも、体操の内村選手や陸上短距離の金丸選手など、独特のルーティンを持っている選手は沢山いますが、何と言ってもその代表は、イチロー選手でしょう。バッターボックスでの動作は誰もが知っている動作です。
では、選手達はこの「ルーティン」を何の為にやっているのでしょうか?
答えは、一連の動作により集中力を高め、単純なミスをなくすためです。雑念を取り払い「そのこと」だけに集中する、もしくは、いつも通りと考える「儀式」である、と考えてもいいでしょう。
しかし、多くの人が勘違いをしているのは、これら動作が自然と出来上がった「癖」のようなものと考えていることです。実際に、本学の学生に競技における自分の「ルーティン」を持っているか?と聞くと、ほぼ全員が持っていると答えます。しかし学生の思っている自分の「ルーティン」のほとんどは、自分の「癖」を再認識しているにすぎません。
実は、この「ルーティン」は、「癖」ではなく、各選手によって緻密に考え出されたものなのです。
例えば、イチロー選手がバッターボックスでバットを持つ右手を1回大きく回すのは、身体が前傾し肩の可動域が狭くなるのを防ぐためです。また五郎丸選手の「ルーティン」も独特の拝むポーズにばかり注目がいきますが、キックの際に、同じテンポで助走するために、「ドレミファソラシド」のリズムを自分で唱えステップしています。
選手が行う独特のルーティン。その裏には、成功するために綿密に考え出された「過程」があることを理解してください。
短期大学部 体育学科
2018年1月
アニメのお姫様の栄養状態と健康
今年のセンター試験にムーミンが出題されて話題になりました。今回は、アニメにでてくる御姫様の栄養状態と健康を豆知識にしてみました。
1人目は「塔の上のラプンツェル」。2010年にディズニー映画になりましたね。深い森の中に立つ高い塔の上に18年間も閉じ込められている御姫様です。
さて、ラプンツェル姫の将来は骨粗鬆症のリスクが高いと思います。日光に当たらない生活が続くとビタミンDが不足するからです。ビタミンDは骨を強くする脂溶性ビタミンです。さらに塔から出られず運動不足が続くと、筋肉が発達しません。骨粗鬆症は中高年の女性、特にヤセ型の人に多い生活習慣病です。
次は、最もポピュラーな御姫様シンデレラ(原題:灰かぶり姫)はどうでしょう。
お父さんが亡くなってから、浪費癖の継母にいじめられるシンデレラ。健康上のリスクは?
靴のサイズが誰も履けないくらい小さいなんて、成長期にエネルギーやタンパク質が充分でなかったかもしれませんね。朝から晩まで水汲みや洗濯などの重労働。煙や灰にまみれての食事作り。満足な食事も与えられず、筋肉労働が続くと、ビタミンB1が不足します。ビタミンB1の欠乏症は全身疲労と脚気です。脚気は重症になると心不全を起こします。さらに低栄養が原因で、肺炎や結核も心配ですし、ホコリっぽい環境で長期間の労働が続くと、中高年になってから慢性閉塞性肺疾患(COPD)や肺がんのリスクが高くなります。
でもシンデレラ姫は、王子と幸せな結婚をしましたね。もしかしたら優雅な生活を送り、豪華な食事を摂り過ぎてメタボリック症候群になるかも?
御姫様たちの生活習慣病は、あまり想像したくないですね。
健康科学部 栄養科学科
2017年12月
蘇生法用人形「レサシアン」のエピソード
この頃駅や市役所、公営の体育館などで心臓に電気ショックを与えるAEDが設置され、心肺蘇生法の講習会も盛んに行われるようになりました。
心肺蘇生法では胸骨圧迫(心臓マッサージ)や人工呼吸の練習用人形を使って実技をします。
少し前までこの人形は女性の顏のモデルであるレサシアンと呼ばれるものが定番でした。
この人形にはエピソードがあります。20世紀初めにパリのセーヌ川で自ら命を絶った少女は身元不明で、当時の習慣によりデスマスクが作られました。
後の人工呼吸法用人形開発者が、この若く美しい少女の死に胸を痛め、また訓練学生にとって美しい実物大の模型があれば励みになると考え、少女のデスマスクをモデルに人形を作り、「レサシアン」と名づけました。
今では世界中で多くの人がレサシアンを使って蘇生法を習得しています(レールダルレサシアン説明書より引用)。
ただ残念なことに、女性の顏のモデルは数年前製造中止となり、最近では男性の顏のモデルに変わっています。
健康科学部 健康スポーツ科学科
2017年11月
♪ドレミって…なんでドレミっていう名前なの?
「ド」の次の音は「レ」、「レ」の次の音は「ミ」、そのあとは…「ファ、ソ、ラ、シ、ド」と続いていきますね。
音にはドからシまでの名前がついていて、多くの人が「ドレミファソラシド」と音の名前をすらすら言うことができます。
有名な「ドレミの歌」の歌詞「ドはドーナツのド、レはレモンのレ…」で覚えた人もたくさんいるのではないでしょうか。
でも、ちょっと考えてみてください。「ド」とか「レ」とか「ミ」とか、なぜその音はその名前になったのかご存知ですか?
誰がその名前をつけたのでしょう?
適当に名付けたのでしょうか?
実はこの「ドレミ」の起源、中世イタリアのカトリック教会までさかのぼります。
今から1000年も前、11世紀のイタリアに、グイード・ダレッツォ(Guido d’Arezzo;995?~1033?)という修道士がいました。
グイードは優れた音楽理論家で、音楽を教えるときに音に名前がないのを不便に思っていました。
そこで彼が目をつけたのが、聖歌集の中の『ヨハネ賛歌』という曲。
これは各フレーズの始まりの音がひとつずつ上がっていく曲なのです。
これはちょうどいい!と思ったグイードは、その歌詞をそのまま音の名前にすることにしました。
ウト(Ut)、レ(Re)、ミ(Mi)、ファ(Fa)、ソル(Sol)、ラ(La)です。
こうして「ドレミ」が始まりました。
16~17世紀頃には、言いにくい「ウト」が「ド」に変わり、「シ」が加わって現在の形になりました。
今では世界的に使われている「ドレミ」という音の名前、ひとつの曲から、ひとりの音楽家が考え出したものだったのです。
これからも、舞台で、練習室で、学校や幼稚園、保育所で、世界中の様々な場所で受け継がれていくでしょう。
健康科学部 こども健康・教育学科
2017年10月
COREトレーニングはコツコツ(骨骨)と
CORE(体幹)トレーニングはトップアスリートのパフォーマンス向上から高齢者の腰痛予防のトレーニングに広まってきました。
ところで、体幹を鍛えるといっても、どの筋肉を鍛えるの?「ズバリ!○○筋です!」と一つの答えはなく、さまざまな方法が唱えられています。
体幹トレーニングが流行りだした初期は、体幹の表面にある筋肉を鍛えていました。ご存知、腹筋群、背筋群です。皆さんの手で触れることが出来る筋肉です。
しかし、表面にある筋肉は力を出すのが得意なので、同じ状態を維持するのが苦手、疲れやすい筋肉ともいえます。
なのに、ギューっと身体を固めてしまうアイソメトリックトレーニングをしています。筋肉ががちがちになって融通が利かない身体になってしまいます。
そこで、それよりも深部にある姿勢維持に働く筋肉を鍛える方法へと変わっていきました。
さらに現在は筋肉を突き抜けて、骨と骨の配置を整えるということも広まっています。
背骨は頭から腰までにS字のカーブを描いています。そこに肋骨と骨盤がついています。骨に付いている最深部の筋肉は、力を発揮する筋肉ではありません。
骨の配置を維持するために、じわじわと同じ力を出し続ける長所をもっています。
そして、ギューっ都固めるのでなく、背骨を一つ一つ、細かく、やわらかく動かすほうが体幹部の肩甲骨、肋骨、骨盤が正しく配置され、怪我をしにくくなります。
手足も楽に運動できます。だから骨の周りの筋肉を鍛えましょうという発想です。
肋骨と骨盤をつなぐ筋肉は呼吸するときにも働くので、おなかをへこませているときは、その筋肉がずーーーーーっと働いてますよ。
このように、呼吸との関わりもあるので、ピラティスやヨガは体幹トレーニングの元祖とも言えるでしょう。
そう、体幹を鍛えるのはコツコツ(骨骨)と地道なほうが良いのです。
短期大学部 体育学科
2017年9月
人体の「再生」
ギリシャ神話の神の一人プロメテウスは天界の物であった「火」を盗んで人間に与えたため、怒った最高神、ゼウスはプロメテウスを山頂に磔にし、毎日大鷲に肝臓をついばまれる責め苦を与えた、とギリシャ神話にあります。これはもちろんフィクションですが、「肝臓」ではなく他の臓器ではすぐに死んでしまうので、責め苦が「毎日」続くことは無いところに生々しさを感じます。実際、肝臓は他の臓器と異なり強い「再生力」を持っていることが知られています。例えば肝臓は手術などで2/3を切除されても、残る1/3が成長して2週間~1か月程度でほぼ元の重量と機能を回復します。これは、肝臓が傷害を受けるとそれに反応して肝細胞増殖因子(hepatpcyte growth factor, HGF)の血中濃度が高まり、それに反応して残った肝細胞が急速に分裂増殖し始めるためです。HGFを発見し、古代ギリシャ時代から認識されていたであろうこの肝臓の再生力の仕組みを解明したのは日本人研究者(中村敏一、大阪大学名誉教授)ですが、HGFが肝傷害時の何に反応して増えだすのか?逆に肝臓が元の重量に回復したらなぜ肝細胞は増殖をやめるのか?ということはまだ分かっていません。その仕組みがあって肝臓は「適正な」大きさと働きを維持しているといえます。この問題の解決は、細胞が異常増殖する疾患、すなわちガンの仕組みや、再生しないといわれている組織の障害、例えば神経傷害による麻痺や後遺症の治療方法などにも発展することが期待されています。
健康科学部 栄養科学科
2017年8月
ウォーミングアップは何のためにやるの?
トレーニングや試合の前に行われるウォーミングアップですが、どんな目的でどんな内容でやっていますか?
ウォーミングアップの一番の目的は、その後のトレーニングや試合で高いパフォーマンスを発揮できるように、からだの準備を整えることにあります。もう一つの目的として、けがの予防がよく挙げられますが、実はウォーミングアップがけがの予防につながるかは今現在でもわかっていません。
ウォーミングアップに体操やストレッチングが頻繁に取り入れられますが、これらは高いパフォーマンスの発揮に効果があるとは言えません。特に、グッグッと反動をつけながら膝や腰などを曲げ伸ばしする体操は、筋肉や腱、靭帯を痛める可能性があり逆効果です。
理想的なウォーミングアップとしては、トレーニングや試合で用いる動きを中心に、全身を使った運動を徐々に強度を上げながら20分前後実施することがすすめられています。
健康科学部 健康スポーツ科学科
2017年7月
「防災意識を高めよう!」
気象庁が出す特別警報を知っていますか。これは、これまで発表されていた警報の規準をはるかに超える豪雨や大津波等が予想され、重大な危険性が著しく高まっている場合に発表されるものです。特別警報の対象となる過去の災害では、東日本大震災の大津波、伊勢湾台風の高潮、平成12年の東海豪雨などが挙げられます。 どれも大きな被害が出でいたものばかりです。特別警報が出た場合には、その地域は数十年に一度しかないような非常に危険な状況にあります。すぐに命を守る行動をしなければなりません。
ところで、気象庁がこれまでの「警報」の他に特別警報を創設して発表することにしたのはなぜだと思いますか。それは、東日本大震災の時には大津波警報を、平成23年の台風12号の時には大雨警報を発表して、重大な災害への警戒を呼びかけたにもかかわらず、そこに住んでいる人々の素早い非難行動に結びつかなかったからです。気象庁は災害に対する危機感をしっかりと伝えるために、特別警報を平成25年8月末から運用を開始したのです。
特別警報が発表されないからといって安心するのは禁物です。もともと「警報」は、重大な災害の起こる恐れがあるときに発表されるものです。しかし、「警報」が出されても被害の経験がないと、人はその情報を軽視して、警戒を緩めてしまうことがあります。
「天災は忘れた頃にやって来る」という言葉を知っていますか。物理学者で随筆家でもあった寺田寅彦氏の言葉です。彼は、「天災と国防」という著書で次のようなことも述べています。
- 日本は気象学的地球物理学的にもまたきわめて特殊な環境の支配を受けているためにそ の結果として特殊な天変地異に絶えず脅かされなければならない運命のもと置かれている ことを一日も忘れてはならないこと
- いつも忘れがちな重大なこととは、文明が進めば進むほど天然の暴威による災害がその 激烈な度を増すという事実であるということ
- 昔の人間は過去の地震や風害に耐えた経験を大切に保存し蓄積してその教えにたよるこ とが甚だ忠実であったということ
健康科学部 こども健康・教育学科
2017年6月
「認識レベルから行動レベルへ」
カーナビの調子が悪くなり音声が出なくなりました。地図を持たなくなった昨今、不案内な土地では途端に制御不能に陥ってしまいます。画面に目をやるも、前方より注意が逸れてしまってはいけないので中途半端な確認になりうまくいきません。そこで、助手席に乗っている人にナビゲーションを依頼しました。しばらくすると、案内標識に出てくる情報を伝え始めましたが、標識に記された土地名やどちらに曲がるとどこへ向かうといった、目に飛び込んでくる情報すべてをこと細かに伝えてくれました。こうなると運転者は、どうしてよいのかわからなくなり、予定していたインターで降りられなくなったり、ひとつ手前の交差点で曲がってしまったりして、効率よく目的地にたどり着くことができなくなってしまいました。
これは運転者の欲している情報と入ってくる情報が「かみ合わない」ことによるもので、リスクを回避する上で、まず、検討しなければならない項目です。この場合、運転者には「○○m先を左(右)」「○km先のインターを降りる(入る)」と端的に行動を促す情報のみ提供することが求められるでしょう。
学校におけるリスク・マネジメントも同様で、対象となる「子ども」に多くの情報を与えても、彼らによる危険回避の行動化を期待することはたやすくないということです。「何のためにやっているのか」を常に振り返らなければ、対策ありきの対策になってしまい「かみ合わない」状態になるわけです。そこで、次の例を考えてみましょう。
感染症予防に「手洗い」は有効であり、その洗い方の質を高めたい。どのフレーズがよいでしょうか。
① バイ菌・ウイルスからからだを守るために、「すみずみまでていねいに洗いましょう」
② バイ菌・ウイルスからからだを守るために、「手のひらをゴシゴシ洗いましょう」
③ バイ菌・ウイルスからからだを守るために、「指先や指の間、手首まで洗いましょう」
どれも学校の手洗い場に貼ってありそうなフレーズですが、③が具体的で手指衛生の質を高めると思われます。①②はしっかり洗わせたい意図はわかりますが、洗う部位が曖昧で洗い残しが生じてしまいます。
ここでは、「感染症予防になる手洗い」をねらいとしており、対象となる「子ども」は「しっかり洗う部位」を求めています。そこで、端的に行動を促す情報、つまり、「かみ合う」情報は③ということになりますね。学校保健の分野では、こんな側面も考えていきます。
短期大学部 体育学科
2017年5月
「不老長寿特区」
研究の合間に究極の「健康」とは?と想像することがあります。それは多くの人の夢でもありますが、古来日本は「不老長寿」の国と思われていた時代があったようで、秦の始皇帝は日本に不老不死の仙薬を求めて徐福という名の遣いを派遣した記録が、中国だけでなく日本各地に残っています。確かに日本には、不老長寿にまつわる伝承が色濃くみられる地域があります。その名も「わかさ(若狭)」の国(今の福井県嶺南地方)には、人魚の肉を食べて不老長寿になった尼、八百比丘尼(やおびくに or はっぴゃくびくに)の伝説があります。また毎年奈良東大寺の二月堂で行われる「お水取り」の行事では、境内の若狭井(わかさい)とよばれる井戸から汲み置かれた水に「万病平癒」のご利益があるとされていますが、伝承ではその水は若狭地方の小浜市「遠敷川(おにゅうがわ)」が水源とされています。そもそも「にゅう(丹生)」とは、その時代若返りの妙薬とされた水銀の原料鉱物を指した言葉です。なぜ若狭が不老長寿と結びつけられたのかは分かりませんが、この地方は平安時代まで朝廷に食料を貢いだ「御食国(みけつくに)」の一つでもあり、古くから食とアンチエイジングの関心が交差する地域であったようです。現在、至学館大学のある大府市を含め、全国に「健康」を掲げる自治体がたくさんあります。「健康」は一人一人の体の問題のはずですが、「聖地」化による啓発効果は今も昔も大きいようです。
健康科学部 栄養科学科
2017年4月
バットの芯とはどんなこと
重さのあるすべての物には、重心という重さの中心点があります。バットの重心は指で支えてバランスが取れる場所にあります。また、バットにボールを当てると振動が伝わります。ボールが当たった場所によって振動の伝わり方が違います。芯に当たると不思議なことにあまり振動が伝わってきません。しかも、芯に当たるとボールが打った感触以上に遠くへ飛んで行きます。芯はボールを良く跳ね返す点なのです。その芯がどのようにして決まるかはまだ十分分かっていませんが、バットの重心と振動の特性、バットの形状、材質などが関わっていると考えられます。いずれにしろ、バットの芯とは、振動が伝わり難く、ボールを良く跳ね返す部分で、それは非常に小さい点のようなものなのです。
健康科学部 健康スポーツ科学科